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29. 世界一安全な場所

Penulis: 月城 友麻
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-17 11:39:57

「では、行くぞ!」

 突然、ゼノヴィアスがシャーロットを抱き上げた。

 ひょいっと――まるで、羽毛でも扱うように。でも、大切な宝物のように、優しく。

「きゃあ!」

 お姫様抱っこの体勢に、シャーロットは真っ赤になった。

「な、何するんですか!?」

「王都へ薬を届けに行く最速の方法だ!」

 そう言うと、ゼノヴィアスは店の外へと飛び出した。

「ちょ、ちょっと! 心の準備が!」

「暴れるなよ?」

 悪戯っぽくウインクする。

「落ちたら、キャッチするけどな」

「……え?」

 直後、大地を蹴った――――。

 ドォン!

 凄まじい轟音と共に、二人の体が宙に舞う。

「きゃぁぁぁ!」

 シャーロットの悲鳴が、茜色の空に吸い込まれていく。

 ぐんぐんと、まるで見えない階段を駆け上るように高度が上がっていった。

 風が髪を乱し、スカートのすそが激しくはためく。

 でも――――。

「あ……」

 恐怖は、一瞬で別の感情に変わる。

 眼下に広がる光景は、まるで神様が描いた絵画だった。

 ローゼンブルクの町が、手のひらに乗るほど小さくなっていく。

 オレンジ色の屋根が夕陽を受けて燃えるように輝き、

 石畳の道は金色の糸のように町を縫っている。

 そして、家々の窓に灯り始めた明かりは、地上に散りばめられた宝石のよう――――。

「うわぁ……」

 思わず、ため息が漏れた。

 生まれて初めて見る、天からの眺め。

 群青色の東の空から、西の茜色へと続く壮大なグラデーション。

 薄紫の雲が流れ、一番星がそっと瞬き始める。

「どうだ? 怖くないか?」

 ゼノヴィアスが心配そうに顔を覗き込んだ。

「ううん……」

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